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浮気調査知識

浮気調査知識

2025/09/09
取得時効
所得税の一時所得の具体例の1つとして挙げられるなどしており、「取得時効」という制度があることは知っているものの、どのような場合に適用されるのか詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。本節では、所有権などを取得する(喪失する)という大きな効果が生じる取得時効(民法)について解説します。1 取得時効とは?取得時効とは、権利者であるかのような状態が継続した場合に、その権利の取得を認める制度です。時効による権利の取得は、承継取得(前の主の権利にもとづく取得)ではなく、原始取得(前の主の権利に依存しない取得)です(1-2 ⇒25頁)。時効による権利取得と相容れない他の権利は、反射的に消滅します。例えば、時効により所有権を取得すれば、前主は所有権を喪失します。なお、時効には消滅時効(3-2⇒168頁)という制度もあります。こちらは、権利が行使されない状態が継続した場合にその権利の消滅を認める制度です。◎取得時効と消滅時効取得時効 → 権利者であるかのような状態が継続した場合に、その権利の取得を認める制度消滅時効 → 権利が行使されない状態が継続した場合に、その権利の消滅を認める制度2 取得時効が認められる根拠取得時効という制度が認められている理由として、長期間継続した事実状態を保護する、期間の経過により過去の事実の立証が困難になることから当事者を保護するためなどが挙げられます。3 取得時効の対象になる権利取得時効の対象になる権利は、所有権(民162条)及び所有権以外の財産権(民163条。例.不動産賃借権、地役権(民283条。1-4のCOLUMN 2⇒45頁))です。ただし、取得時効は、権利の継続的行使を前提とする制度であるため、財産権であっても、1回的な給付行為を目的とする金銭債権や抵当権などは、取得時効の対象になりません。動産には即時取得(本節のCOLUMN 2)があるため、取得時効の成否が争われることが多いのは、不動産の所有権です。4 取得時効の要件所有権の取得時効が認められるための要件は、①ある時点で占有していたこと、②ア)①の時から20年経過した時点で占有していたこと、またはイ)①の時から10年経過した時点で占有しており、占有開始時に善意であることについて無過失であること、③当事者が相手方に対して時効援用の意思表示をしたことです(民162条、145条)。④②の占有とは、自己のためにする意思をもって物を所持することです(民180条)。民法162条では継続した占有が要件となっていますが、占有開始時及びその後の一定時点の両時点において占有した証拠があるときは、占有はその間継続したものと推定されるので(民186条2項)、前後2つの時点での占有を証明すれば足ります。⑤イ)の(善意であることについて)無過失とは、自分に所有権があると信じることについて過失がないことをいいます。⑥の援用とは、時効の利益を受ける旨の意思表示をすることです。20年間(または10年間)継続占有したからといって、時効による権利を当然に取得できるわけではなく、援用によって権利取得の効果が生じます。なお、民法162条をみると、上記以外に要件として所有の意思、平穏、公然、善意(自分に所有権があると信じること)が挙げられています。しかしながら、民法186条1項によってこれらは占有していれば推定されるので、取得時効の成立を争う側が、所有の意思のないこと、強暴、隠匿、悪意(所有者でないことを知っていたこと、または所有者であることを疑っていたこと)を主張・立証しなければなりません。民法162条(所有権の取得時効)1項 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。2項 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。5 取得時効の効果時効による権利の取得の効力は、時効援用時からではなく、起算日(起点)に遡って生じます(民144条)。起算点を任意に選択することはできず、占有開始時が起算点となります。取得時効により所有権を取得した場合、占有開始時から所有者だったことになり、前主に対して、占有開始後から時効援用時までの使用利益や法定果実(民88条2項、例.賃料)を返還する必要はありません。6 取得時効の課税関係個人が時効により所有権を取得した場合、時効援用時の属する年分の一時所得になるとされています。取得時効による所有権取得の効果は、時効援用時に確定するため(本節の5)、時効援用時に収入すべき権利が確定したといえるからです(1-5⇒51頁)。これに対して、当事者間には取得時効の成立をめぐって争いがあるときは、判決確定時を収入計上時期とすべきという見解があります。また、時効援用時に収入計上するとなると、援用時期をずらすことで、収入計上時期を恣意的に調整できてしまうのではないかとも考えられます。COLUMN 1 要件事実要件事実とは、一定の法的効果(権利の発生、障害、消滅、阻止)を発生させる法律要件に該当する具体的事実をいいます。例えば、売買契約に基づく代金支払請求権という権利を発生させるための要件事実は、売買契約締結の事実と代金支払約束です(民555条参照)。民事訴訟においては、当事者のいずれかが主張責任・立証責任を負うかを踏まえて民法などの実体法規を分析し、当事者の求める法的効果を発生させるために必要な法律要件を明らかにしたうえで要件事実に該当する主張をしていくことになります。要件事実を意識すると、民法などの実体法規を立体的に理解することができるようになります。本節の4は、要件事実を意識した解説になっています。COLUMN 2 即時取得[1] 即時取得とは?売主が動産の所有権を有しているか調査が必要だとすると、日常頻繁に行われる取引が困難になります。スーパーで食品や中古本屋の本を購入するときに、店が各商品の所有権を有しているか買主が調査しなければならないのであれば、日常生活に支障をきたします。そこで、動産を占有している取引相手が無権利であると信頼して取引した場合において、取引相手が無権利者であったときに、引渡しを受けた者が動産の権利を即時に(取得時効のような一定期間の経過は不要)取得できる即時取得という制度が設けられています(民192条)。民法192条(即時取得)取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。取引が売買契約なのであれば、買主は所有権を取得することができ、それにともない元の権利者は所有権を失います。[2] 即時取得の要件即時取得が認められるためには、民法192条に記載された要件をすべて充たす必要があります。まず、「動産」を「取引行為によって」取得することが要件です。不動産は即時取得の対象になりません。また、他人の物を誤って自宅に持ち帰った場合は、取引行為ではなく事実行為によって取得しているので、この要件を充たしません。次に、「動産の占有を始めた」こと、すなわち引渡しを受けたことが要件です。さらに、占有の取得が「平穏」「公然」「善意」「無過失」で(「無過失」)行われることが要件です。「善意」とは、取引相手が動産について権利者であると誤信したことをいいます。日常生活では、善意は「他人のためと思う心」などという意味ですが、ここでは誤信したという意味です。民法の他の条文では、「知らなかった」という意味で用いられることもあります。無過失とは、その誤信に過失がなかったことをいいます。平穏、公然、善意、無過失は、即時取得を主張する者は主張・立証する必要がありません。「平穏」「公然」「善意」については、民法186条1項の推定により、また、無過失については、民法188条により推定された取引相手の権利を信じたことと無過失の推定が働くため、主張・立証が不要になります。民法188条は、占有者は占有を正当化する権利(本権)を有することが推定されるという趣旨であり、推定される本権は、民法186条1項により所有の意思があると推定されるので、通常は所有権です。POINT 1取得時効とは、権利者であるかのような状態が継続した場合にその権利の取得を認める制度である。原始取得の一種である。所有権の取得時効が認められるための要件は、①ある時点で占有していたこと、②ア)①の時から20年経過した時点で占有していたこと、またはイ)①の時から10年経過した時点で占有しており、占有開始時に善意であることについて無過失であること、③当事者が相手方に対して時効援用の意思表示をしたことである。時効による権利の取得の効力は、起算日に遡って生じる。
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2025/09/09
譲渡担保
所得税基本通達33-2は、譲渡担保に係る資産の移転と譲渡所得課税について定めています。譲渡担保は、税理士試験にも出題されています。令和2(2020)年度の相続税法の計算問題では、「宅地Vは、上記(9) の夫Aに対する金銭の貸付に当たって、Uから譲渡担保として所有権を移転されたものである」と記述されています。また、令和元(2019)年度の国税徴収法の問題では、譲渡担保権者の納税額責任を規定した国税徴収法24条について言及することが求められています。本節では、譲渡担保について解説します。1 物権の種類物を支配する権利のことを「物権」といいます。それに対し、物権とよく対比される「債権」は、債権者に対して一定の行為を要求できる権利です。物権の対象としての物を民法の規定は、「物」とします。債権者に対してのみ主張できる債権とは異なり、誰に対しても主張できる物権は、同じ物の上に同一内容の物権が複数存在することはできません。物権の種類として、所有権、占有権、用益物権(例.地役権。本節のCOLUMN)、担保物権(例.抵当権。1-3⇒30頁)があります。2 物権法定主義物権は、民法などの法律に定めるもののほか、創設(内容変更を含む)することができません(民175条。物権法定主義)。債権における契約自由の原則とは異なります。創設できない理由は、行動の自由と取引の安定性を確保するためです。第三者に対しても主張できるところ、自由に創設できてしまうと、第三者の行動の自由が制約されます。また、第三者に対しても主張できるので物権はその存在と内容を公示することが望ましいところ、存在と内容が限定されていないと公示が困難となり、取引の安定性が確保されません。ただし、物権法定主義には例外があり、判例は、民法などに定められていない、いくつかの権利に物権と同様の効力を認めてきました。その1つが「譲渡担保」です。3 譲渡担保とは?(1) 譲渡担保とは?譲渡担保とは、債権の担保のために設定者(債務者または第三者)が自己の有する財産権(主として所有権)をあらかじめ債権者に移転し、債権の弁済があれば財産権を設定者に戻し、弁済がなければ財産権が債権者に確定的に帰属するという契約によって設定される担保物権です。多くの譲渡担保において、設定者が目的物を引き続き使用収益する旨の約定がなされます。◎譲渡担保債務者(譲渡担保設定者)⇔ 譲渡担保権者 ⇔ 債務者目的物の財産権 →(2) 譲渡担保の対象譲渡担保の対象(目的物)となるのは、不動産、動産その他の権利(例.債権)です。以下では、不動産または動産を目的物とする場合について解説します。不動産を担保とする担保物権として抵当権がありますが、抵当権は債務が履行されない時の実行(競売)手続に時間と費用がかかるのに対し、譲渡担保は私的実行(下記(6))が可能です。また、動産(例.工作機械、コンピューター)を担保とする担保物権として質権がありますが、質権は債権者に対して設定時に目的物を引き渡さなければならないのに対し、譲渡担保であれば設定者は、設定後も目的によって目的物を使用することができます。(3) 譲渡担保の対抗要件譲渡担保を第三者に対抗(主張)するための要件は、不動産譲渡担保の場合は、登記(民177条。登記原因は「売買」または「譲渡担保」。1-3のCOLUMN 2⇒37頁)、動産譲渡担保の場合は、引渡し(民178条。譲渡担保権者が譲渡担保権者のために占有するという占有改定が可能です)。ただし、譲渡担保権者には対抗要件としての引渡しと占有改定が可能です。(4) 譲渡担保の法的性質判例は、譲渡担保は、債権担保のために目的物の所有権を移転するものであるが、「所有権移転の効力は担保目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められる」とします。譲渡担保権者は目的物の所有権を確定的に帰属しておらず、譲渡担保権設定者との間にもとづく権利が担保されているといえます。(5) 譲渡担保の課税関係所得税基本通達33-2は、債務の弁済の担保として資産を譲渡した場合において、譲渡がなかったものとするには、契約書への一定の記載及び税務署への申立書の提出という形式的要件の具備を求めています。しかしながら、形式的要件を具備していなくても譲渡担保目的であれば、譲渡はなかったものとして取り扱われるべきです。また、冒頭の相続税法の試験問題では、債権者(譲渡担保権者)の相続の取扱いが問われています。税務資格試験の基礎知識として、友人に対する金銭の貸付金など譲渡担保の目的物である土地の債権は算入しないことになります(相基通11の2-9(1))。◎所得税基本通達33-2(譲渡担保に係る資産の移転)債務者が、債務の弁済の担保としてその有する資産を譲渡した場合において、その譲渡が次のすべての事実を明らかにしてしたときは、その譲渡はなかったものとして取り扱う。(1) 当該譲渡が債務の弁済の担保としてされたものであること。(2) 当該資産は、債務者が従来どおり使用収益をすること。(3) 弁済をしたときには当該資産がその債務者へ返還されることが予定されていること。(6) 私的実行と清算私的実行とは、判例は、債務の不履行にもかかわらず債務が履行されない場合には、裁判所による手続を経ずに、譲渡担保の目的物の処分権限を取得し、目的物から優先的に弁済に充てることができます(私的実行)。私的実行の方法として、譲渡担保権者が目的物を適正に評価したうえでその所有権を確定的に取得し、代物弁済(3-8の206頁)前に債権の満足を得る帰属清算型と、譲渡担保権者が目的物を第三者に売却し、その売却代金を債権の弁済に充てる処分清算型があります。イ 清算目的物の処分が債権担保の額を超えるときは、譲渡担保権者は、譲渡担保権設定者に対して差額を返還しなければなりません(清算義務)。譲渡担保権者の清算金の支払いと、譲渡担保権設定者の目的物の引渡しは、同時履行の関係(4-1⇒287頁)になります。(7) 受戻権譲渡担保権設定者は、下記の一定時点までに被担保債権の弁済をすることによって、目的物の所有権を取り戻すことができます(受戻権)。帰属清算型の場合、目的物の価額が被担保債権の額を超えるときは、清算金の支払いのとき、目的物の価額が被担保債権の額を超えないときは、その旨の通知のとき。一方、処分清算型の場合、処分代金が被担保債権の額を超えなかったときにも、この受戻権を行使できなくなるとき(消滅時)に資産の譲渡があったものとして、課税関係が生じます。COLUMN 地役権平成25(2013)年度税理士試験の相続税法の計算問題では、「敷地の一部には地役権が設定されており、その部分には設定額が設定されている」と記述され、地役権に関する知識が問われています。地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益のために使用する用益物権です(民280条)。地役権の便益を受ける自己の土地を「要役地」、地役権の便益に供される他人の土地を「承役地」といいます。承役地は、要役地の所有者だけでなく、承役地の所有者も利用することができます。他に、賃借権契約(1-7⇒67頁)によって承役地を利用するという選択肢もありますが、賃借権は債権であるため、物権である地役権よりも効力が弱いという欠点があります。また、賃借権の場合は、賃借人が利用することができなくなります。地役権の成立原因として、当事者の契約による設定のほか、時効による取得(民283条。1-1⇒18頁)などがあります。地役権の目的である便益の内容は限定されていません。例えば、眺望が悪い建物に眺望を確保するため通行のために他人の土地に道路(通行地役権)を設定することができます。なお、このCOLUMNの冒頭で紹介した試験問題の問では、高圧線を架けるために地役権が設定されていますが、他の選択肢として、区分地上権(民269条の2)を設定する方法があります。区分地上権とは、工作物を所有するため、他人の土地の地下または上空の一定の範囲を使用する権利です。土地所有者は、地下または上空の空間以外の部分を利用することができます。令和3(2021)年度税理士試験の相続税法の計算問題では、「宅地には、下水管(マンマ)敷設を目的として区分地上権が設定されている」と記述されており、地下を使用する区分地上権が出題されています。◎他人の土地を利用する権利地役権(用益物権)賃借権(債権)区分地上権、地上権(物権)などPOINT 1譲渡担保とは、債権の担保のために設定者(債務者または第三者)が自己の有する財産権をあらかじめ債権者に移転し、債権の弁済があれば財産権は戻るが、弁済がなければ財産権は債権者に確定的に帰属するという契約によって設定される担保物権である。物権法定主義の例外である。譲渡担保は、債権担保のために目的物の所有権を移転するものであるが、所有権移転の効力は担保目的の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められる。譲渡担保権者は目的物の所有権を確定的に帰属しておらず、譲渡担保設定者のもとになんらかの物権的地位が留保されている。譲渡担保権者は、裁判所による手続を経ずに、譲渡担保の目的物の処分権限を取得し、目的物から優先的に債権を回収する方法として、帰属清算型と処分清算型がある。譲渡担保権設定者は、一定時点までに被担保債権の弁済をすることによって、目的物の所有権を取り戻すことができる。
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2025/09/09
弁済供託
所得税基本通達36-5には、不動産賃貸借契約において賃貸料が「供託」された場合などの収入計上時期が定められています。また、相続税・贈与税の試験問題にも出題されています。例えば、税理士試験にも出題されています。令和3(2021)年度の所得税法の試験問題では、損益計算書上の家賃収入に、供託金の引揚額150万円が含まれており、「家賃の値上げの係争に伴い係争額に相当する額は家賃収入に計上し」と記述されています。また、同問題には、「甲は賃借人Cに対し前年2月の契約更新時に家賃を10万円から10.5万円に値上げする申入れを行ったが、Cの合意が得られず旧家賃を供託された。前年2月分から本年5月分までの供託家賃を引き出したものである。この係争は本年末現在係争中であり、6月分以降の家賃も供託されているが、損益計算書上の家賃収入に計上していない」と記述されています。本節では、弁済供託(民法)について解説します。1 供託とは?供託とは、法令の定める一定の場合に、金銭などを供託所などに寄託することをいいます。供託には、①弁済のためにする供託(弁済供託)、②担保のためにする供託(担保保証供託。民369条3項など)、③強制執行のためにする供託(執行供託。民執156条1項など)、④保管のための供託(保管供託。民578条など)などがあります。本節の冒頭で紹介した不動産賃貸料の供託は①弁済供託、納税猶予の担保としての供託は②担保保証供託に該当します。本節では、民法に規定されている弁済供託について解説します。2 弁済供託とは?弁済供託とは、弁済者(債務をだけでなく弁済をなし得る第三者を含む)が供託所に弁済の目的物を寄託することによって、債務を消滅させることをいいます(民494条)。弁済者と供託所との間で締結される寄託契約(民657条)であって、第三者である債権者のためにするものです(民537条)。弁済供託がよく利用されるのは、本節の冒頭で紹介した不動産賃貸借契約においてです。買主Aからの賃料増額請求(1-7P68頁)を受け入れられない賃借人が相当と認める額の賃料を支払としたら、賃貸人が受け取らないときなどに利用されます。債務者は、弁済供託によって債務の消滅の効力が生じてもなお債務を履行させることができ、債権者への支払いに備えて支出しなければなりません。弁済供託によって弁済の目的物の保管義務を免れる点は、目的物を買主に提供しても受領を拒絶される点(目的物全部以外の場合には、目的物を供託所に預けられるので、債権者の消滅しても不利益は生じません)。弁済の目的物について債権消滅のおそれがあるとき(例.生鮮食品)などは、裁判所の許可を得て、目的物を競売に付し、その代金を供託所に供託することもできます(民497条)。◎供託所(目的物が)金銭、有価証券の場合 ⇒ 法務局などその他の物品の場合 ⇒ 法務大臣の指定する倉庫業者など不動産の場合 ⇒ 裁判所の選任した保管者3 供託の原因どのような場合にも弁済供託ができるわけではなく、供託できる場合は限定されています。まず、弁済の提供をしても債権者が受領を拒んだときです(民494条1項1号)。また、債権者が弁済を受領できないときです(同条1項2号)。例えば、債権者が不在のときです。さらには、債務者を確実に確認できないときです(同条2項)。例えば、死亡した債務者の相続人が不明であるときです。ただし、確実にではないことにつき弁済者に過失があるときは、供託できません。4 弁済供託の効果弁済供託は債務が消滅します(民494条1項)。供託した場合、遅滞なく、債権者に対して供託の通知を行います(民495条3項)。知らなければなりません。債権者は、供託所から供託物を受け取ることができます(民498条1項)。一方で、弁済者は、債権者が供託を受諾せず、または供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託所から供託物を取り戻すことができます(民496条1項)。取り戻したときは、供託をしなかったものとみなされ、債務は消滅しなかったことになります。COLUMN 不動産所得の収入計上時期[1] 所得税基本通達36-5不動産所得の収入計上時期が所得税基本通達36-5に定められています。不動産所得の収入計上時期は、原則として、支払日が定められているものについてはその支払日とします。前月末日が支払日であり、翌年1月分の賃料を前年12月中に受け取った場合、前年の収入とならずに、前受収益として処理し、翌年の収益に算入する人も同様となります。契約として、解除権の特約に争いがあるなどして、前払家賃として、契約の効力の存否などについて係争がある場合において、賃貸人が不動産などにより受け取ったときは、訴訟の判決などによって収入計上時期となります。本来は過去の支払期日に支払いを受けるべきものであったとしても、客観的に認識し得る状態にあったとはいえないからです。ただし、賃料増額請求(1-7P58頁)に関する係争がある場合において、賃貸料の弁済供託がされたときは、供託された金銭は、支払日の収入となります。賃貸人が判決などにより差額(供託不足額)の支払いを受ける場合は、差額は、判決や和解などがあった日に収入とします。冒頭で紹介した試験問題では、法務局から供託金を引き出した時に収入計上しており、誤った処理です。なお、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなど一定の要件に該当する場合には、その年の賃貸期間に対応する賃貸料の額をその年の収入に算入することが認められています。[2] 権利確定主義・管理支配基準所得税法36条1項は、「その年において収入すべき金額」を収入金額に算入するとします。収入すべき金額とは、原則として、収入すべき権利が確定した金額であり、権利確定時に収入計上するとされています(権利確定主義)。ただし、例外的に、金銭を受け取るなどして現実の収入があった場合において、権利確定の蓋然性があるなどとして、納税者の管理支配に属しているときは、収入する権利が確定していなくても、受取った時に収入すべき時期になります(管理支配基準)。上記[1]に挙げた例(前月末日が支払日であり、翌年1月分の賃料を前年12月に受け取った場合、前年の収入とならず)は、管理支配基準によるものです。POINT 1弁済供託とは、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託所に寄託することによって、その債務を消滅させることをいう。弁済供託できる場合は限定されている。弁済供託は債務が消滅する。債権者は、供託所から供託物を受け取ることができる。
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2025/09/09
手付
所得税基本通達34-1に「一時所得」に該当するものの例示されています。この例示の中に、「民法557条(手付)の規定により売買契約が解除された場合に当該契約の当事者が取得する手付金又は償還金(業務に関して受けるものを除く)」(i)が挙げられています。手付は、税理士試験にも出題されています。平成29(2017)年度の法人税法の計算問題では、「期末の債権等の明細」に、「土地購入のための手付金1000万円」と記述されています。本節では、不動産売買契約などで授受される手付(民法)について解説します。1 手付とは?手付とは、契約のときに当事者の一方から相手方に対して交付される金銭などのことをいいます。契約に付随して締結される手付契約に基づき交付され、契約の履行がされた場合には、通常、代金の一部に組み込まれます。手付の金額や内容については、原則として、当事者が自由に決めることができます。手付は、代金の一部払いである内金とは異なります。また、申込証拠金とも異なります。申込証拠金は、不動産売買に関して、購入希望者が売主に対して優先的に購入権を取得するために預ける金銭であり、売買契約の不成立の場合は原則として返還する必要があります。2 手付の種類民法上、手付は解約手付と推定されます(民557条1項)。解約手付とは、契約の解除権が留保されているという意味での手付です。買主は、手付金を放棄して契約を解除することができ、売主は、手付金の倍額を償還(交付された手付金と、さらに同額の金銭)して契約を解除することができます。違約手付として、解除された場合に個人が取得する手付金または償還金は一時所得に該当します(所基通34-1(i))。ただし、業務に関して受け取ったときは、事業所得になります。当事者の合意により、解約手付ではなく(または解約手付に加えて)、損害賠償額の予定(当事者による損害賠償額のあらかじめの合意)として手付の意味をもたせることもできます。さらに、手付は違約金であり、別に実損額の賠償請求を、または違約金を超える実損害の賠償請求をできるという違約手付の意味をもたせることもできます。民法557条は売買契約に関する規定ですが、賃貸借契約などの有償契約(当事者が互いに対価的な給付をする契約)にも準用されます(民559条)。民法557条(手付)1項 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。◎手付の種類解約手付損害賠償額の予定としての手付違約手付3 履行の着手相手方が契約の履行に着手した後は、相手方が不測の損害を被ることを防止するため、契約を解除することはできません(民557条1項但書)。この場合の、履行の着手とは、相手方が代金を支払う準備をして、履行の催促をしたことなどをいいます。4 損害賠償額との関係解約手付による契約解除をした場合、債務不履行による損害賠償請求は認められません(民557条2項、545条4項。1-9⇒67頁)。手付解除の相手方は、手付放棄または倍返しによって損害が補填されているので、損害賠償請求を認める必要がないからです。COLUMN 契約の解除民法の「契約の解除」とは、契約当事者の一方が契約または法律の規定により、相手方に対して一方的な意思表示をすることによって契約を終了させることをいいます(民540条1項。2-2⇒120頁)。手付解除も、契約の解除の一形態です。POINT 1手付とは、契約のときに当事者の一方から相手方に対して交付される金銭などのことをいう。内金や申込証拠金とは異なる。民法上、手付は解約手付と推定される。買主は、手付金を放棄して契約を解除することができ、売主は、手付金の倍額を償還して契約を解除することができる。当事者の合意により、解約手付ではなく(または解約手付に加えて)、損害賠償額の予定としての意味を手付にもたせることもできる。相手方が契約の履行に着手した後は、契約を手付解除することはできない。
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2025/09/09
不動産の賃貸借1
不動産経営をしている個人から、所得税の確定申告の依頼を受けることがあるのではないでしょうか。また、相続税申告の依頼を受けたときに、被相続人が相続財産として借入れをして建物を建てて、サブリースを採用していることがあるのではないでしょうか。本節では、不動産の賃貸借契約のうち、賃料増減額請求、サブリース、敷金(民法、借地借家法)について解説します。1 賃貸借契約賃貸借契約とは、賃貸人が貸主として、賃借人にある物の使用収益をさせることを約し、賃借人が借主として、これに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって成立する契約です(民601条)。レンタカーのような動産もありますが、社会的に特に重要なのは不動産賃貸借契約です。2 借地借家法民法には賃貸借の規定(601~622条)がありますが、不動産賃貸借については民法の特別法である借地借家法が優先的に適用されます。借地借家法は原則として、建物所有を目的とする土地賃貸借及びすべての建物賃貸借に適用されます。本来は、契約内容をどのようなものにするかは契約当事者の自由(契約自由の原則)ですが、一般的に弱い立場にある不動産賃借人の利益を保護するための規定が借地借家法には設けられています。その規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とされます(借地借家9条、16条、21条など)。3 賃料増減額請求契約の期間が長期にわたる不動産の賃貸借契約(1-8⇒62頁)においては、途中、契約で賃料額が不相当になることがあります。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大などの予測できなかった事情によって近隣の賃料相場が下がり、従前の賃料が過酷となって不相当になることがあります。そこで、借地借家法では賃料額の変更を認めています。借地については、契約期間中に賃料額が不相当になったときは、当事者は、将来に向かって賃料額の増減を請求することができます(借地借家11条1項)。不相当となったかどうかは、①土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減、②土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動、③近傍同種の建物の賃料との比較によって判断します。この増減額請求権の規定は、強行法規であり、当事者の合意で排除することはできません。賃料増減額請求を受けた賃借人は、相当と認める額を支払えば、結果的に支払額が違っても、債務不履行にはならず、賃借権解除を回避することができます。ただし、賃借人が不足額を賃貸人に支払うときは、年10%の利息を付して支払わなければなりません(同条2項)。一方、賃料増減請求を受けた賃貸人は、相当と認める額の賃料の支払いを受けることができます。ただし、超過額(適正賃料額を超過して受け取った額)があるときは、年10%の利息を付して賃借人に返還しなければなりません(同条3項)。なお、借地についてと同様の規定が設けられています(借地借家11条)。4 転貸借契約(1) 転貸借契約とは?賃貸人は、賃貸人の承諾を得れば、賃借物を転貸することができます(民612条1項)。賃借人(転貸人)と転借人との間の賃貸借の転貸借契約といいます。賃貸人と転貸人との間には直接の関係は生じません。不動産を転貸借するのに賃貸人の承諾が必要なのは、借地借家法によっても修正を受けません。賃貸借契約が終了した場合の転貸借契約は終了するのでしょうか。転貸借契約は、賃貸借契約を基礎とするため問題となります。なお、賃貸借契約が終了したときは、転貸人の地位を賃貸人が引き継ぐという地位承継が契約になされています。賃貸借契約が終了しても、別段の定めである転貸借契約が自動的に終了するわけではありません。しかしながら、転貸借契約はその前提が失われるのであり、賃貸借契約の終了原因によって存続するか否かが異なります。賃貸人の債務不履行(例.賃料不払い)を理由として賃貸借契約の解除(2-2⇒121頁)をしたときは、転貸人は、賃借人に対抗することができ、賃借人を退去させることができます(民613条3項但書参照)。転貸借契約は、賃貸人が転貸人に対して返還を請求したときに、賃借人(転貸人)の債務の履行が不能により終了します(判例)。一方、賃貸人と賃貸人との合意により賃貸借契約を解除したときは、賃貸人は、転貸人に対抗することができず、賃借人を退去させることができません(同条3項本文)。理由は、契約は相対的効力しかもたないのが原則であるから、合意解除(解除契約。2-2⇒121頁)をすることによって合意成立前に現れた第三者(転借人)の権利を害することはできないからです。5 サブリース(1) サブリースとは?サブリースとは、不動産所有者が(転貸目的の)不動産賃貸・管理業者(サブリース業者)に建物を賃貸し、サブリース業者が不動産所有者の承諾のもと転借するという契約です。不動産所有者は、サブリース業者から勧誘を受け、収支予測をしたうえで資金を金融機関から借り入れて建物を建設することが多いです。不動産所有者がサブリースを採用するメリットとして、賃料保証期間中、サブリース業者から契約どおりの一定の賃料を受け取ることができる、入居者(転借人)から直接賃料を受け取る必要がなく、借入金の返済計画を立てやすいことなどが挙げられます。一方、サブリース業者のメリットは、転借料と賃料の差額が利益になることです。また、建物の建設や修繕にも関与することによって利益が生まれることがあります。い(サブリースではない転貸借事業にも適用される)と考えられています。6 敷金(1) 敷金とは?敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭のことをいいます(民622条の2第1項)。敷金は、敷金設定契約という賃貸借契約とは別個の契約により交付されます。(2) 抱き合わせされる債権の範囲敷金は、賃貸借から生ずるすべての賃借人の債務を担保します。賃貸借契約の継続中のみならず、契約終了後の不法占有による賃料相当額の損害賠償債務も、敷金からの増額対象になります。(3) 敷金返還請求権の発生敷金返還請求権は、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に発生します(同条1項1号)。明け渡した後に敷金の返還を請求できるのであり、敷金が返還されなければ明け渡さないという主張は認められません。敷金返還請求権の金額は、「敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額」です(同条1項)。(4) 敷金の充当賃借物の賃貸借契約の存続中に賃借人が賃料を支払わないときは、敷金を賃料債務の弁済に充当することができます。他方、賃借人が賃貸人に対し、敷金を賃料債務の弁済に充当してほしいと請求することはできません(同条2項)。賃貸借契約が明け渡された場合、敷金は残債務へ当然に充当されます。賃借人が相殺などの意思表示をする必要はありません。(5) 課税関係所得税基本通達では、敷金について、次に掲げる金額のうち次に掲げるものを超える年の終了する年度の所得金額の計算上、総収入金額に算入するとし、敷金確定額(1-5のCOLUMN 2⇒51頁)。敷金返還請求権を放棄したことによる、しないことが確定した敷金の額として収入計上します。敷金のうち返還を要しないこととなる部分の金額 引渡しの日における当該資産の価額① 敷金のうち返還を要しないこととなる部分の金額が、賃貸の期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額である場合 賃貸期間に対応する部分の金額② 敷金のうち不動産等の貸付けの期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額が、賃貸期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額であることによる当該資産の価額 貸付けにより受けた敷金の額から返還を要しないこととなる部分の金額を控除した残額③ 敷金のうち不動産等の貸付けが終了しなければ返還を要しないことが確定しない部分の金額が、賃貸の期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額であったことによる当該資産の価額 貸付けが終了した日における当該資産の価額Google スプレッドシートにエクスポート税理士試験の令和3(2021)年度所得税法の計算問題では、損益計算書の家賃収入に敷金45万円が含まれており、このうち本年中に返還不要が確定したものが20万円であると記述されています。なお、令和2(2020)年度所得税法の計算問題では、敷金などのうち返還しないものの取扱いが問題されています。「飲食店を賃借するにあたってCビルのオーナーへ支払った敷金(300万円)は、建物賃貸借契約の終了による。敷金は1年以内に解約すると30%、2年以内に解約すると20%、3年以内に解約すると10%が返還されない」としたうえで、繰延資産に該当するかどうかの判断が求められています。COLUMN サブリースの規制賃貸住宅管理業者の家賃債務の実施をめぐり、管理業者と所有者あるいは入居者との間でトラブルが増加しており、特にサブリース業者については、家賃保証などの契約条件の説明をめぐるトラブルが多発し社会問題となっています。そこで、令和2(2020)年12月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。トラブルを未然に防止するため、すべてのサブリース業者の勧誘時の誇大広告や不実告知を禁止するとともに、違反者に対しては、業務停止命令や罰金などの措置を講じ、実効性を担保します。サブリース業者・勧誘者によるマスターリース契約の勧誘時に、家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げず、または不実を告げる行為が禁止されます。また、マスターリース契約について品質表示について品質表示に加えて、契約変更に関する事項などについて、著しく事実に相違する表示をし、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示が禁止されます。さらに、国土交通省は、法執行を前提に、サブリース事業の契約を策定しました。「家賃保証」などの認識をなくすため文言を訂正する場合に使用する場合は、その文言に関係する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合はその旨及び情報提供の方法を、家賃が保証される期間が限定される場合はその旨などについて必ず表示しなければならないこととしました。また、契約の締結前に、所有者に対し、契約条件にかかわらず借地借家法に基づき家賃が減額され得ることなどを書面に記載して説明しなければならないことを明確化しました。POINT 1賃貸借契約の当事者は、不動産賃貸借については民法の特別法である借地借家法が適用される。借地借家法では、契約期間中の賃料額の変更を認めている。賃借人は、賃貸人の承諾を得れば、賃借物を転貸することができる。賃貸借契約が終了した場合に転貸借契約が存続するかどうかは、賃貸借契約の終了原因によって異なる。サブリースとは、不動産所有者がサブリース業者に建物を賃貸し、サブリース業者が所有者の承諾を得て転貸するという契約。サブリース業者は賃貸借契約であるため、借地借家法32条(借地借家権)が適用される。敷金とは、賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭である。
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2025/09/09
不動産の賃貸借2
令和2(2020)年度税理士試験の所得税法の計算問題では、「店舗立退きに伴い支払いを受けた立退料の所得区分と所得計算」が出題されています。受け取った立退料1500万円の内訳は下記のとおりとなっています。・「家屋の明渡しによって消滅する借家権の対価の額に相当する金額」…150万円・「店の休業による収入金額を補填する金額」…300万円・「店の休業期間中に支払う使用人の給与等の必要経費を補填する金額…200万円・「新店舗の敷金及び設備造作費用等を補填する金額」…850万円本節では、不動産賃貸借契約の契約更新及び立退料(民法、借地借家法)について解説します。1 契約の法定更新・更新拒絶・解約申入れ(1) 借地ア 存続期間借地権には最短存続期間が定められており、30年です(借地借家3条)。そして、最初の更新後の存続期間は20年、その後は10年です(借地借家4条)。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。イ 法定更新・更新拒絶借地権者を保護するため、存続期間満了後に契約が更新されたものとみなす法定更新制度が設けられています。法定更新が認められるのは、存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときや、存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときです。ただし、借地権設定者(地主)が遅滞なく異議を述べたときは、法定更新を否定されます(借地借家5条1項但書)。借地権設定者が契約の更新を拒絶する(異議を述べる)には、正当事由が必要です(借地借家6条)。借地権者が契約の更新を請求しても正当事由がないときは、法定更新が認められる。これに対し、存続期間が満了後に土地の明け渡しを求める訴訟を提起しなければならないわけではなく、地主に正当事由が認められない場合は、契約は法定更新されます。法定更新されたときは、存続期間以外は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家5条)。(2) 借家ア 存続期間建物賃貸借契約については、存続期間の定めがあるものと、ないものとがあります。定めがあっても1年未満の期間の場合は、存続期間の定めのないものとみなされます(借地借家29条1項)。イ 法定更新・更新拒絶・解約申入れ① 期間満了による更新拒絶(存続期間の定めあり)建物賃貸借契約の期間満了の1年前から6月前までの間に、相手方に対して更新拒絶の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。ただし、存続期間は定めのないものとなります(借地借家26条1項)。賃貸人からの更新拒絶には、正当事由が必要です(借地借家28条)。これに対し、賃借人からの更新拒絶には、正当事由は不要です。なお、存続期間の定めがあるときは、契約中に解約の申入れがなければ、建物賃貸借契約を中途解約することはできません(民618条参照)。存続期間中に契約の更新がされず、中途解約の申入れができないときは、賃貸借契約とみなされることがあります。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などで存続期間中に事務所を移転しようとする場合には、注意が必要です。② 解約申入れ(存続期間の定めなし)建物賃貸借には、存続期間の定めがないとき(法定更新されたときを含む)は、いつでも解約の申入れをすることができます。建物賃貸借契約は、申入れの日から3ヶ月が経過することによって終了します(民617条1項2号)。一方、建物賃貸人が、存続期間の定めのない場合に解約の申入れをしたときは、建物賃貸借契約は、申入れの日から6ヶ月を経過することによって終了します(借地借家27条1項)。もっとも、解約申入れには、正当事由が必要です(借地借家28条)。2 正当事由(1) 正当事由の判断建物賃貸借契約及び賃借人が契約の更新拒絶や解約申入れをするには、上記のとおり、正当事由が必要です(借地借家6条、28条)。正当事由の有無は、借地権の場合、①借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情、②借地に関する従前の経過、③土地の利用状況、④借地権設定者が借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をしたことから判断します。一方、建物の賃貸借契約の場合、①建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、②建物の賃貸借に関する従前の経過、③建物の利用状況、④建物の現況、⑤建物の賃貸人が建物の賃貸借人に対して給付をする旨の申出をしたことから、正当事由の有無を判断します。(2) 立退料立退料を支払うことは、正当事由を補完する役割を果たします。あくまでも補完する役割なので、高額の立退料を申し出ても、正当事由が否定されることがあります。立退料の算定にあたって客観的な計算方法はありますが、②退去に伴うその他の実質的なものとされています。まず、消滅する借家権または営業権の価格といったものではありません。2つ目は、居住権及び営業権の価格に対する補償という性質です。居住していた場合は、精神的な苦痛に対する慰謝料、事業としての店舗であれば、休業損害と補償です。3つ目は、移転費用の補償という性質です。移転先に対して支払う敷金や賃料増加分を補償することもあります。(3) 立退料の課税関係個人が、事業所得または確立して立退料を受け取った場合、所得税法上の各所得の収入金額になります。所得の分類は下記のとおりです。まず、消滅によって消滅する権利の補償としての性格を有する立退料は、譲渡所得となります。冒頭の税理士試験の「家屋の明渡しによって消滅する借家権の対価の額に相当する金額」150万円は、譲渡所得となります。次に、収益または必要経費の補填としての性格を有する立退料は、事業所得等となります。本節の冒頭で紹介した税理士試験の「店の休業による収入金額を補填する金額」300万円、「店の休業期間中に支払う使用人の給与等の必要経費を補填する金額」200万円及び「新店舗の敷金及び設備造作費用等を補填する金額」850万円は事業所得となります。上記以外の性格を有する立退料は、一時所得となります。COLUMN 4 建物買取請求権・造作買取請求権[1] 借地の場合存続期間の満了に際し、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を買い取ることを請求できます(借地借家13条)。建物買取請求権は形成権であり、借地権者の一方的意思表示により、売買契約が成立したのと同一の法的効果が生じます。強行法規であり、特約で建物買取請求権を排除することはできません(借地借家16条)。[2] 借家の場合建物賃貸借は、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある場合には、借家人は、建物賃貸借が期間満了または解約申入れによって終了するときに、賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求できます(借地借家33条。2-3⇒157頁)。造作買取請求権も形成権です。任意法規であり、特約で造作買取請求権を排除することができます。COLUMN 5 定期建物賃貸借更新のない建物賃貸借として、定期建物賃貸借があります(借地借家38条1項)。賃貸人が貸しやすすることで、優良な供給を促進させることを目的としています。なお、更新のない借地権として、定期借地権(借地借家22条)があります。定期建物賃貸借の要件は、①建物賃貸借契約に期間を定めること、②契約更新がないとの特約をすること、③契約を公正証書などの書面で行うこと、④契約前に契約更新がないことを記した書面を賃借人に交付して説明をすることです。COLUMN 6 サブリースと更新拒絶などの正当事由賃貸人である建物所有者が、維持管理費が増加し固定資産税も高騰したことなどを理由として、不動産を売却しようと考え、そのために賃貸借契約を更新拒絶または解約しようとしても、賃借人であるサブリース業者が正当事由(借地借家28条)がないことを理由として応じないというケースが数多く生じています(1-7P57頁)。POINT 1借地借家法には、契約の法定更新制度が設けられている。借地権設定者及び建物賃貸人が契約の更新拒絶や解約申入れをするには、正当事由が必要である。立退料を支払うことは、正当事由を補完する役割を果たす。
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2025/09/09
損害賠償
所得税法9条1項18号に非課税所得として、損害賠償金で、心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるものと規定されています。本節では、損害賠償(民法)について解説します。1 損害賠償とは?(1) 損害賠償とは?損害賠償とは、他人に与えた損害を金銭で補償することです。民法上の損害賠償の根拠を大別すると、債務不履行による損害賠償(民415条)と不法行為による損害賠償(民709条)の2つがあります。前者は、債権者が契約などによる債務の内容に従った履行をしない債務者に対して行う損害賠償です。一方、後者は、被害者(債権者)が権利を侵害した加害者(債務者)に対して行う一般的な損害賠償です。債務不履行と不法行為の相違点として、下記のとおりです。まず、証明責任です。債務不履行では、債権者が債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであること(債務者の免責事由によるものはないこと)を証明する必要があるのに対し、不法行為構成では、被害者が加害者の故意または過失を立証する必要があります。もっとも、債務不履行構成であっても、債権者が具体的な債務内容を明らかにしなけばならないため、実務上は、証明責任の点では債務者にとって債務不履行のほうが有利であるわけでも必ずしも解消されていないです。2点目は、過失相殺です。過失相殺とは、損害の公平な分担を図るため、被害者の過失を減じる事情を考慮することです。不法行為構成の場合、債務不履行の構成(民418条)とは異なり、損害賠償責任の有無は対象とならず、過失相殺の結果、賠償額がゼロとなることはできません(民722条2項)。また、過失相殺することは義務ではなく、裁判所の裁量によります。もっとも、条文上は上記相違点がありますが、解釈上は同じく解するべきであると考えられています。3点目は、消滅時効期間です。下表のとおり、起算点及び消滅時効期間が異なります(3-2⇒168頁)。ただし、人の生命または身体の侵害の場合は、債務不履行構成であっても不法行為構成であっても主観的起算点から5年間、または客観的起算点から20年間です。不法行為構成の場合に主観的起算点からの消滅時効期間が債務不履行構成よりも短い3年間となっているのは、不法行為は通常、未知の当事者間において偶発的な事故に基づいて発生するものであり、不安定な場に置かれる加害者を保護するためです。◎損害賠償請求権の消滅時効期間債務不履行による損害賠償請求権(民166条1項) 不法行為による損害賠償請求権(民724条) 人の生命または身体の侵害の場合の不法行為による損害賠償請求権(民724条の2)主観的起算点 権利を行使できることを知った時から5年間 被害者らが損害及び加害者を知った時から3年間 被害者らが損害及び加害者を知った時から5年間客観的起算点 権利を行使できる時から10年間 不法行為の時から20年間 左記起算点から20年間Google スプレッドシートにエクスポート(4) 請求の競合債務不履行による損害賠償と不法行為による損害賠償のいずれを選択できうる場合があります。例えば、使用者が事業のために第三者に損害を加えた場合に、使用者が職場環境に配慮しなかったり、医師が医療過誤により患者に後遺症を負わせた場合です。判例は、請求権の競合を認めており、いずれの損害賠償も選択することができる。2 不法行為(1) 不法行為責任の制限不法行為責任は、物権的請求権や債務不履行責任を補完する役割を果たします。物を奪われた場合、物権的請求権(返還請求権)を根拠として、その物の返還を請求することはできますが、一定期間奪われたことにより生じた損害の賠償請求を行うことはできません。また、契約関係がない相手方から権利の侵害を受けた場合、債務不履行による損害賠償請求をすることはできません。これらの場合であっても、不法行為による損害賠償請求であれば賠償回復を図ることができます。民法709条(不法行為による損害賠償)故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(2) 不法行為の要件不法行為による損害賠償請求の要件は、①権利侵害(=被害者利益の存在+加害行為)、②加害者の故意または過失、③損害の発生、及び④加害行為と損害との間の因果関係です。(3) 故意または過失不法行為責任においては、過失責任の原則が採用されています。過失のない者は(不可抗力による)結果責任を負わないようにすることにより、個人の行動の自由が保障されています。不法行為の要件となっている故意とは、侵害結果の発生を意欲し、または容認していたことをいいます。また、過失とは、結果を回避するために必要な注意を怠ること(予見可能性)をいいます。注意義務を尽くしても結果を回避できなかったときは過失になりません。注意義務の程度も通常要求されるもので、軽過失であれば不法行為の要件である過失を充たします。それに対し、重過失とは、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意をすればたやすく有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」をいいます(判例)。(4) 損害とは?ア 損害とは、不法行為がなければ被害者が置かれていただろう財産状態と、実際の財産状態との差額をいいます。差額を計算するには、財産的損害と非財産的損害に分けて考えます。なお、現実損害を越える賠償を認める懲罰的賠償は、日本では認められていません。財産的損害には、被害者が支払いを余儀なくされる積極的損害(例.治療費、弁護士費用。1-11⇒79頁)と、被害者が利益を得られなくなる消極的損害(例.休業損害、後遺症などによる逸失利益)があります。非財産的損害とは、肉体的・精神的苦痛のことです。苦痛を補填する慰謝料は、生命または身体や人格的な利益の侵害を受けた場合に認められますが、財産権の侵害の場合(例.愛車を壊された場合)には、一般的に認められません。ただし、愛犬などのペット(法律上は物)が殺された場合に慰謝料が認められることもあります。慰謝料は、肉体的・精神的苦痛だけでなく、財産的損害を補填する役割もあるとされています。被害者が将来の低額となった場合に慰謝料を増額することによって全体の賠償額が調整されることもあります。もっとも、慰謝料を認めると賠償額の増額を増加させるおそれがあるため、不法行為(加害者)には、刑事罰及び社会との制裁が与えられることもあります。イ 損害賠償の範囲損害賠償の範囲は、権利侵害と相当因果関係のある損害に限られ、債務不履行の損害賠償の範囲を定める民法416条が類推適用されます。すなわち、通常生ずべき損害によって生じた損害が、損害賠償の範囲になります。(5) 不法行為の効果不法行為に対する救済手段は損害賠償(民709条)、原状回復(回復ではなく)を求めることです(民72条1項が準用する民417条)。3 損害賠償の調整(1) 個人が受け取った場合個人が損害賠償金を受け取った場合、損害を補填するものであり、純資産の増加とならないため、所得税は非課税とされています。例えば、心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料、休業損害金、医療費などや、資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金は、非課税です。ただし、必要経費を補填する額に相当する金額(例.商品の原料費)及び収入金額に代わる賠償金(例.棚卸資産の損害に対する部分)は、課税されます(所令30条2号)。(2) 個人が支払う場合個人が支払う休業や死亡に関連する損害賠償金は、必要経費に算入できません。また、事業に関連して、製造した商品により個人の権利を侵害した場合に支払う損害賠償金については、所得税の負担を減少させ、支払った損害賠償による負担を軽減するのは相当ではないため、必要経費に算入できません(所税45条1項9号、所基通45条の2)。一方、事業に関連して、軽過失により他人の権利を侵害した場合に支払う損害賠償金は、必要経費に算入することができます。COLUMN 1 貨幣の役割と機能(古代・中世)貨幣の起源は諸説ある。例えば、交換の媒介物としての機能です。物々交換は、常に相手が必要なものとは限らないからです(取引所的な世界)。貨幣の機能として、価値の尺度(社会的な世界)、価値の貯蔵手段としての機能です。貨幣は、交換が容易なため、将来の消費に備えて蓄積されます。古代ギリシャでは、八百屋は一種の物々交換で、負債としての貨幣はあまり存在せず、貴族などが使用していました。ローマ帝国でも、貨幣が普及しましたが、ローマ帝国の滅亡後は、西欧では貨幣が衰退しました。中世ヨーロッパにおいて、11世紀頃から商業が活発化し、貨幣が再び流通し始めました。当初は、金貨や銀貨などの実物貨幣が使用されていましたが、13世紀頃から、銀行券や手形などの信用貨幣が登場しました。16世紀には、重商主義の時代を迎え、国家が貨幣の発行を管理するようになりました。19世紀には、金本位制が確立され、貨幣価値が安定しました。破壊を呪術的機能により再建するためであったと考えることができる。COLUMN 2 税理士の損害賠償責任(1) 債務不履行責任税理士は、依頼者に対して債務不履行による損害賠償責任を負うことがあります。税理士は、「納税者から信頼される申告の代理行為等を委任されたときは、委任契約に基づく善管注意義務として、委任の趣旨に従い、専門家としての裁量判断をもって委任事務を処理する義務を負」います。そして、「申告書等の作成・提出に当たり、委任契約に基づく審査義務の一環として、税務の観点から審査する過程で申告がなされ確認するなどの行為を怠り、これが原因として、これに是正した上で申告を行う義務を負」います(東京地判平22[2010]年12月6日判決・判タ1377号123頁)。この義務に違反すれば債務不履行となります。税理士は、過誤を避けるため、契約の締結に際し、契約の対象となる業務の範囲を明確にすること、業務の遂行に当たっては、証拠書類を十分に確認すること、依頼者とのコミュニケーションを密にすることなどが重要です。(2) 付随的義務税理士が、委任事務の明示的な依頼がなかった事項であっても、債務不履行による損害賠償責任を負うことがあります。税理士には、申告の代理において、相続税の納付についてどのような問題があるかを確認し、これがない場合は特に問題はないとして、依頼者に対してどのような援助が可能かを検討し、確認の上で告知・助言を行う義務が、相続税の申告に伴う付随的義務としてあるとした判例(東京高裁平7[1995]年6月19日判決・判タ914号148頁)があります。この義務に違反すれば、債務不履行となります。(3) 法令適合義務税理士は、一般的には税法に関する法令以外の法令について調査すべき義務を負いません。しかしながら、日本国籍を有しないことが調査義務の懈怠が認定されていれば、一般法人であれば相続人が日本国籍を有しない非居住者であるとの扱いを前提に、租税条約の適用があるか否かについて確認すべき義務を負うとした判例(東京地裁平成26[2014]年2月13日判決・判タ1420号335頁)があります。この義務に違反すれば、債務不履行となります。(4) 共同不法行為による損害賠償通達は、国民に対して法的拘束力を持つものではなく(本節のCOLUMN 1⇒192頁)、また、個々の具体的事案に妥当するかの解釈も権威であるため、形式上通達に従い処理することが許されないわけではありません。しかしながら、「税務行政の基本通達に基づいて処理すること、当該具体的事案について基づく通達と異なる解釈適用をすることも、当該通達の見込に反して見解のところ是正処分や申告是正勧告などの結果を招くことも予想されることから」、税理士は、「信頼される税務の専門家として、申告・納税手続に関与するに当たって、依頼者の信頼を裏切らないように、誠実に業務を遂行すべきである」と解されています(大阪高判平13[2001]年10月18日判決・判例時報1854号165頁)。この義務に違反すれば、債務不履行となります。[2] 不法行為責任税理士は、契約関係にない第三者に対して不法行為による損害賠償責任を負うことがあります。税理士が、融資先から求められた会社の決算書の虚偽記載などに関与し、融資先において、金融機関を誤信させて融資を実行させ、これによって損害を被らせたとした判例(仙台高裁昭63[1988]年2月26日判決・判例時報993号181頁)があります。POINT 1民法上の損害賠償の根拠を大別すると、債務不履行による損害賠償と不法行為による損害賠償の2つがある。両者は、消滅時効期間が異なる。民法715条(使用者等の責任)1項 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。3項 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。2 使用者責任の要件被害者が使用者に対して使用者責任に基づく損害賠償請求をする場合の要件は、①被用者の行為が不法行為責任(民709条)の要件を充たすこと、②使用者と被用者との間に不法行為時に使用関係があったこと、③被用者の不法行為が使用者の事業の執行について行われたことです。②の使用関係には、個人事業者(自法人)だけでなく、法人(本節のCOLUMN 1)も含まれます。また、②の使用関係は、契約関係の有無は重要ではなく、実質的にみて使用者が被用者を監督すべき関係にあれば足りるとされています。例えば、元請負人と下請負人の被用者との間に使用関係が認められることがあります。なお、使用者が相当の注意をしたときなどは損害賠償責任を免れると規定されていますが(民715条1項但書)、実際に免責されることはほとんどありません。3 使用者から被用者に対する求償権損害賠償の支払いをした使用者は、被用者に対して求償権(償還を求める権利)を行使することができます(同条3項)。もっとも、使用者は、被用者を用いることによって侵害の危険をつくりだし、利益を上げている使用者側は、信頼により求償権の行使が制限されます。使用者が損害全額を負担すべき場合もあり得ます。「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して、求償することができる」(判例)。4 被用者から使用者に対する求償権(逆求償)損害賠償の支払いをした被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができます(最高裁令2[2020]年2月28日判決・裁判所Web)。理由は、①報償責任及び危険責任の考え方は、使用者と被用者との内部関係にも及ぶ、②使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合と、使用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でないからです。なお、被用者が損害全額を負担すべき場合もあり得ます。COLUMN 2 法人の不法行為法人の不法行為に対する損害賠償請求は、信義則上相当と認められる賠償請求による損害賠償請求というような方法ではなく、直接、法人の不法行為として不法行為による損害賠償請求(民709条)をすることもできるのでしょうか。法人に対する不法行為による損害賠償請求は、被害者が具体的な使用者の不法行為を問題とする必要がないというメリットがあります。裁判所の判断は分かれており、法人に対する不法行為による損害賠償請求について、肯定するものと否定するものとがあります。否定する学説は、法人について心理状態を観念できず法人の過失を論ずることができないことなどを理由として挙げています。COLUMN 3 交通事故令和3(2021)年度税理士試験の法人税法の計算問題では、交通事故に関する出題があり、損金処理した賠償金として、「取締役A氏の業務外の交通違反による交通事故賠償金1万円(人身A氏の業務中の交通事故による交通違反金15万円)がある」と記述されています。令和元(2019)年度及び平成27(2015)年度においても出題されています。交通事故は、自動車などの運転中の道路交通法違反行為のうち、飲酒、無免許運転などに悪質で危険なものを除いたものの(「反則行為」)は、一定期間内に反則金を納めると、刑事罰は科せられないという行政上の特別の仕組みです。反則行為は犯罪であり、本来は刑事手続となりますが、大量発生する事件の処理の迅速化を目的として、この制度が設けられています。反則行為は、交通事故割合制度の適用を受けるか、拒否するかを選択することができ、拒否して反則金を納めなかった場合、必ずしも起訴されるわけではなく、不起訴処分になることもあり得ます。交通事故を起こして支払った損害賠償の関係として、所得税法上、必要経費に算入することはできません(45条1項7号)。また、法人税においては、業務遂行に関連してされた行為に係る交通反則金は損害金に算入され、その他に係るものは給与と定められています(法基通9-5-8)。POINT 1使用者が事業の執行について第三者に不法行為により損害を加えた場合、使用者は被用者に対して損害賠償責任を負う。使用者責任の要件は、①被用者の行為が不法行為責任の要件を充たすこと、②使用者と被用者との間に不法行為時に使用関係があったこと、③被用者の不法行為が使用者の事業の執行について行われたことである。損害賠償をした使用者は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができる。また、損害賠償の支払いをした被用者は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。
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2025/09/09
弁護士費用
所得税基本通達37-25及び37-26に、業務遂行上支出した民事事件と刑事事件の弁護士費用などを必要経費に算入できるかどうかが定められています。弁護士費用の取扱いは、税理士試験にも出題されています。令和3(2021)年度の所得税法の計算問題では、損益計算書上の費用に、「滞納家賃の回収のために要した弁護士報酬30万円が含まれている」と記述されています。弁護士費用の必要経費算入の重要性が、法律相談でよく質問を受けるのが、「民事事件の弁護士費用を相手方に負担させることができるかどうか?」です。本節では、「民事事件の弁護士費用を相手方に請求できるかどうか?」(民法、民事訴訟法)について解説します。1 弁護士費用の請求方法民事事件の弁護士費用を相手方に請求する方法として、訴訟費用として請求するのと、損害として請求することが考えられます。2 訴訟費用として請求民事訴訟法では、訴訟費用は原則として敗訴者が負担します(民訴61条)。この「訴訟費用」に、被告の負担とする」と記載されます。この確定文言で、相手方に請求できるかと思われますが、この訴訟費用とは、訴え提起にあたって裁判所に支払った印紙代や郵便料のことであり、弁護士費用は訴訟費用とは見なされていません。したがって、訴訟費用に該当することを理由として、敗訴した相手方に弁護士費用を請求することはできません。3 損害として請求訴訟は、相手方が本来は行うことも認められているので、弁護士に委任しなければならず訴訟活動をすることと因果関係を有する請求権に基づく弁護士費用を損害として相手方に請求することができます(判例)。一般的には、不法行為(例.交通事故)による損害賠償請求の場合(民709条)は原則として請求できるのに対して、債務不履行(例.金銭債務の不履行)による損害賠償請求の場合(民416条)は請求できないとされています。ただし、弁護士費用を相手方に請求できるかどうかの判断は、信義則に照らされ、個別の事件に応じて判断されます。弁護士費用を相手方に請求するのに、信義則に照らして、信義則の履行請求権の確保に値しないこと、占有権を侵害した場合(被告が敗訴した場合)に、被告の弁護士費用を原告に負担させる制度はないので、上記の規定は、原告が勝訴した場合の弁護士費用の取扱いが問題になるとになります。もっとも、弁護士費用を請求できる場合であっても、事案の難易、請求額、認容額などを総合的にみて相当と認められる範囲のものに限られます。弁護士に支払う報酬の全額が当然として認められるわけではありません。実務上、認容額(請求額のうち裁判所が損害として認めた金額)の1割程度を目安に算定されることが多いです。COLUMN 弁護士費用に関する最近の判例最高裁令和3(2021)年1月22日判決・裁判所Webは、「契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合とは異なり、侵害された権利利益の回復そのものではなく、契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。また、契約を締結しようとする者は、債務の履行がされない場合があることを考慮して、契約の内容を検討したり、契約を締結するかどうかを決定したりすることができる(後者注1)。加えて、土地の売買契約において買主が負う土地の所有権移転登記手続をすべき債務は、契約から一義的に定まるものであって、土地の所有権の移転を求めるべき債務は、上記契約の締結という客観的事情によって基礎付けられるものである(後者注2)。そうすると、土地の売買契約の買主は、上記債務の履行を求めるための訴訟の提起・遂行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合は、そのために要した弁護士費用は、これらの事務との間に相当因果関係に基づく損害賠償として請求することはできないというべきである」と判示しています。注1)は、契約上の債務の履行請求の一環であるのに対し、注2)は土地売買契約による債務などから履行請求に関する固有の理由です。POINT 1弁護士に委任しなければならず訴訟活動をすることと因果関係に属する請求権に基づく履行は、弁護士費用を損害として相手方に請求することができる。一般的には、不法行為に基づく損害賠償請求の場合は、弁護士費用を損害として請求できるが、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合は請求できない。医療過誤や労災事故などの専門的な知見の場合である。弁護士費用を相手方に請求できる場合であっても、事案の難易、請求額、認容額などを総合的にみて相当と認められる範囲のものに限られる。実務上、認容額の1割程度を目安に算定されることが多い。
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